道場の方針

 

道場訓

一、人格完成に努むること

一、誠の道を守ること

一、努力の精神を養うこと

一、礼儀を重んずること

一、血気の勇を戒むること

 

 空手道を修行するものにとって最も大切な信条・理念です。この五箇条の道場訓は、一般的に松涛館流空手道を稽古する道場に掲げられています。

 稽古終了時に、皆で唱和していきたいと思います。子供たちには、最初は詳細な意味が解らなくても常に唱和し続けることにより、じわりじわりと沁み込んでくることでいいと思います。

 

礼儀

 空手道は日本古来の武道のひとつです。武道を修練するときに最も大切なのは、礼儀です。そしてその礼儀には、日本文化としての所作、また空手道に特有の作法があります。幼児であっても、この作法を身に付けながら稽古をしていきたいと思います。

 

稽古の目標

 年齢、上達度、また個々によってもその目標は違い、経験年数によっても目標は変わってくると思います。

 子供たちの保護者の方からは、空手道を稽古することをとおして、礼儀(作法)や精神力(我慢して頑張ること)を身に付けたい、体力を養いたい、また上達するにつれ、もっと上手くなりたい、競技大会で勝ちたい、黒帯(有段者)になりたい等々、様々です。

 また、熟年者であれば、武道としてまた日本文化としての空手道の武術を学んでみたい、また味わってみたい、いつかは黒帯(有段者)になりたい、生涯武道として身体を動かしてゆきたいとの想いもあると思います。

 同じ稽古時間の中では、上記すべての目標を同時に叶えることは難しいと思います。よって、子供の部と熟年者の部を時間を分けて稽古していきたいと思います。


稽古の体系

 松濤館流の空手道の稽古の体系は、基本・形・組手を上達度に応じて内容を徐々に高度にしていき、その上達度を昇級審査によって測り、級を位置づけ帯の色を変えていきます。

 

 級と帯の色

  10級(初級者) 白帯  (空手道の稽古を始めた段階)

   9級      黄帯  (一応、基本的にフォームができていることを要す)

   8、7級      緑帯  (連続技による腰の回転と手技の要領を掴んでいること)

   6、5、4級   紫帯  (それぞれの技(基本・組手・形)に或る程度の切れ味ができて、

                強さを表現できる段階であること)

   3、2、1級    茶帯  (技の運用が身につきスピードと力による極めの強さを

                表現し、筋力の瞬間的な締めと緩める要領を体得すること)

   初段      黒帯  (空手道の基礎的な技術を習得しこれらの基本的な使用を

                 一応なし得る者)

 稽古の内容(初段までの内容)

  以下の3種類の稽古を級に合わせ稽古していきます。

  ① 基本  突き・蹴り・受け技と移動しながらの突き・受け・蹴り技の組み合わせ

  ② 形   平安初段~五段、鉄騎初段、抜大、観空大、慈恩、燕飛、順路初段

  ③ 組手  五本組手、基本一本組手、自由一本組手、自由組手

 

 子供達と熟年者と稽古の内容や指導方法(昇級審査や帯の色は原則同じですが)は、稽古時間を変えて行いたいと思います。

 

競技空手と伝統的空手

 2021年東京オリンピックでは空手道が正式種目として競技されました。オリンピックでの競技は、「形」と「組手」の2種類に分かれ、男女4種目(形、組手(体重別3種ずつ))計8種目行われました。

 オリンピックでの競技ルールは、世界空手道連盟(WKF)のルールです。「世界はひとつ、空手もひとつ」、日本国内公式競技のルールも、現在この世界空手道連盟のルールに準じて全日本空手道連盟が定めて実施しています。少年少女大会、中学生大会、インターハイ、国体、インカレ、全日本選手権もこのルールです。

 ただ、地域やそれぞれの団体内の競技会では、この共通ルールを選手の態様に合わせ、ローカルルールを採用していることが多くあります。例えば一般的に、小学生以下の競技会では、学年別または習熟度別(級別)に種目が分かれ、競技を行うといった方法です。

 競技会への参加は、稽古のモチベーションを保ったり高めたりするためには、とても大切だと思いますし、楽しいことでもあります。競技を通じて友人が増えることにも繋がります。競技会出場のためだけの稽古とはしたくありませんが、日頃の延長線上にあり稽古の成果の披露と捉え、まずは当然、空手道の基本の身体の使い方を習得していきたいと思います。

 

 一方、沖縄発祥の空手が本土へ伝播され、技術体系と理論により様々な流派となり発展してきた技術を、一緒に勉強研究していきたいとも思います。この道場では、船越義珍先生を流祖とし、日本空手協会の中山正敏先生、我が日本空手松涛連盟の初代主席師範故浅井哲彦先生、そして現主席師範香川政夫先生が高められた松涛館流の技術を稽古していきます。

 全日本空手道連盟における松涛館流空手道の正統な団体である一般財団法人全日本空手道松涛館によって定められた正確な形・技術を稽古していきます。

 特に形に含まれる技と演武線・運足の真の意味、使い方、組手での応用など、先達の残された形は、稽古する私達に何を教えてくれているのか、私(指導者)自身まだ判らない点がとても多く、一緒に勉強し研究し稽古していきたいと思います。特に熟年者の方々では、こういった技術を学びたい想いは大きいのではないでしょうか。

 武道に興味はあるけれど「なんか空手は危なさそう」と思って踏み込めなかった方でも、少しずつ体を動かしていき、激しい動きばかりの空手ではない身体の使い方を一緒に学んでみませんか。空手道の稽古は決して危険ではありませんし、競技空手ではない自己鍛錬としての空手道の道を歩み出してみませんか。

 

現在の競技空手

 オリンピックを契機として、空手が世間に注目されて行くでしょうが、オリンピックでの競技を観戦して一般の方がどう感じるかは、個人的には少し不安でもあります。特に組手競技での外国人選手の技や動きを観て「あれが空手なのか…」と。空手に対するイメージ・評価が上がるのか下がるのか…その評価はまだあまり聴きません。

 競技ルールについては上述しましたが、公式組手競技時の怪我防止の安全具として、現在、拳サポータ(手のグローブ)、胸当て、インステップガード(足の甲当て)、シンガード(足の脛当て)、マウスピース、高校生以下はメンホー※(顔面頭部保護用マスク)を装着して行います。

 安全具のうち特にインステップガード・シンガードの装着が必須になってから、組手競技の得点に結びつく技の技術が大きく変わってきているように感じます。具体的に言えば、蹴り技、特に上段蹴りの技術です。また、突き技も超高速になってきています。それは構えのスタイルや動き方の変化にも通じています。世界の選手の動きは、日本国内の従前の空手の動きや構えとは大きく変わってきていると感じるのは、私だけの勝手な感覚ではないとも思います。

 なぜこういうことを思うのか、実は所属する日本空手松涛連盟での組手競技は、2018年までは全空連ルールを採用していませんでした。防具もメンホーやインステップガード・シンガードは装着していませんでした。2020年からは、全空連ルールに準じた方式になっています。指導者自身も従前の概念と変えていかなくてはなりません。指導者自身が審判をするのが一般的ですから、ルールを熟知していないと競技の戦略も戦術もたてられません。これは、我々に課せられた課題であり、責務であると思います。私自身が日本空手松涛連盟の競技、全空連ルールの競技を審判として参加し常に感じていたことであります。

  (※日本空手松涛連盟での組手競技では、小・中・高校生も成人もメンホーは装着しません。)

 競技スポーツの世界では、どんな種目もルールはどんどん変化し進化していますし、ルールが変わればそれに合わせて技術も変化していきます。空手競技も同じなんでしょうが、それは、世界レベルの選手の話だけでなく、子供たちの競技のスタイルにも大きく影響を与え、変化していくものと思います。私(指導者)自身も未経験な動きやスタイルもありますが、一緒になって勉強し稽古していきたいと思います。